ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)はジアシルグリセロールをリン酸化してホスファチジン酸を産生する酵素であり、現在まで9種類のアイソザイムのcDNAがクローニングされている。これらの9種類のアイソザイムはそのドメイン構造上の特徴から5つのサブグループ(I〜V型)に分類されている。最近ヒトゲノムデータベースの解析からDGKδと相同性の高い未知のII型DGKが存在する可能性が出てきた。そこで我々はこの新規II型DGKアイソザイム(10番目であることからDGKκと命名)をクローン化し、その性質を調べた。DGKκ(chromosome X p11.22に位置)は1271アミノ酸からなり、II型アイソザイム(DGKδおよびη)に共通した構造であるPHドメイン、亜鉛フィンガーおよび二つに分かれた触媒ドメインを持っていた。しかし、他のII型アイソザイムとは異なり、SAMドメインを持っておらず、N端にはGlu-Pro-Ala-Proの繰り返し配列を持っていた。RT-PCRによりDGKκの組織分布を調べたところ、精巣に多く発現していた。DGKκをHEK293細胞に発現させると、未刺激の細胞においてDGKκは細胞膜に存在しており、C端部分の配列がこの局在性に寄与していることが示された。また、DGKκをCOS-7細胞に発現させると未刺激の細胞でもDGKκのSerあるいはThr残基のリン酸化が観察されたが、ホルボールエステル刺激によっても顕著なリン酸化の増加は認められなかった。さらに、II型DGKを発現させたCOS-7細胞をH_2O_2刺激したところDGKκだけがチロシンリン酸化され、その際にDGKκの触媒活性は約50%減少した。
|