研究課題/領域番号 |
16570121
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鎌田 英明 兵庫県立大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10233925)
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研究分担者 |
平田 肇 兵庫県立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40049052)
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キーワード | レドックス / 活性酸素種 / 腫瘍壊死因子 / JNK / MKP / ネクローシス / NF-κB / IKKβ |
研究概要 |
腫瘍壊死因子(TNF)はさまざまな遺伝子発現を誘導するとともに、ネクローシスおよびアポトーシスにより細胞死を引き起こすサイトカインである。従来はTNFによる細胞死誘導にはカスパーゼが主要な役割を果たしており、JNKは関与しないと考えられていた。しかしNF-κBやIKKβのノックアウトマウスを用いた解析により、TNFの細胞死誘導へのJNKの関与が明らかにされてきた。さらにこの機構への活性酸素種(ROS)の関与が想定されてきた。実際にNF-κBを欠損した繊維芽細胞をTNFで処理すると細胞内で大量のROSの産生が認められる。さらに抗酸化剤の処理によりJNKの持続性の活性化が阻害され、細胞死が防御される。それではどのようにしてROSはJNKの活性化を引き起こして細胞を死に至らしめるのであろうか?我々はIKKβ/NF-κB系とJNKのクロストークにおけるROSの作用の分子機構についてIKKβを欠損した繊維芽細胞を用いて解析した。ROSの細胞内シグナル伝達系の標的分子の第一候補としてプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)が想定された。すべてのPTPの活性中心はシステイン残基であり、この反応性に富むシステインはきわめて容易に酸化修飾を受ける。特にJNKの脱リン酸化反応を担うMAPキナーゼホスファターゼ(MKP)はPTPファミリーに属しており、細胞内におけるJNK系のレドックスセンサーとして機能していることが考えられた。実際にIKKβを欠損した繊維芽細胞をTNFで処理すると、ROSが産生されるのと同時にJNKに対するホスファターゼ活性の低下が認められた。またMKP-1、MKP-3、MKP-5、MKP-7に関して解析したところ、細胞内でMKPの活性中心のシステイン残基がジスルフィドあるいはスルフェン酸に酸化され、MKPが失活することが判明した。さらにドミナントネガティブ型のMKPの発現系とJNK1の欠損細胞を用いた解析から、ROSによるMKPの酸化修飾が持続性のJNKの活性化を誘導し、この応答が細胞死を引き起こすことが確認された。さらに劇症肝炎および化学発がんのモデル系を用いたノックアウトマウスの解析により、活性酸素種によるJNKの駆動が組織傷害・発がんに関連することを見出した。
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