アルドステロン(ALDO)は、哺乳動物において水電解質代謝を制御する最も強力なミネラルコルチコイド(MC)である。ALDOは、副腎皮質球状層から産生され、水電解質輸送を行う上皮細胞でMC受容体(MR)を通じて作用発現することが知られている。しかし、近年、心臓、大動脈でALDOが微量産生され、近傍でMRを介して作用する証拠が蓄積してきた。心血管系では、MCが心肥大・線維化、血管の恒常性への関与が示されている。本研究では、心血管におけるALDO合成系、作用系による心肥大・線維化の分子機構の解析を目的とした。 本課題により、心臓・大血管におけるアルドステロン合成系因子のmRNAレベルは、正常ラットにおいて検出可能であるが極めて低いレベルであることが判明した。次に、内因性アルドステロン産生による心肥大・線維化のモデルとしてDahl食塩感受性ラットを用い、心血管における産生・作用系因子の発現レベルを解析した結果、食塩負荷によりALDO合成酵素mRNAレベルが増加した。一方、MR、グルココルチコイド(GC)合成酵素、GC受容体(GR)等のmRNAレベルは変化しなかった。この結果から、心肥大・線維化に伴って心血管系におけるALDO合成が増加しうることが示唆された。このときALDO関連因子であるAZ-1遺伝子の発現が上昇することが判明した。さらに、食塩負荷ラットへのALDO持続投与によるMRを介した心肥大・線維化モデルを用いた。AZ-1は、正常な心臓では冠状動脈等の血管平滑筋基底膜に局在する。ALDOによる心肥大・線維化におけるAZ-1の局在を解析した結果、ALDO投与により心筋細胞基底膜、心筋内毛細血管にAZ-1が検出された。以上の結果から、心肥大・線維化においてはMRによるALDOに対する応答が起こり、AZ-1を含む細胞外マトリクス蛋白質が蓄積することが示唆された。
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