研究概要 |
糖輸送体の分子機構の解析を目標にして、遺伝子操作法が確立しており、全ゲノム配列が明らかな酵母Saccharomyces cerevisiaeの糖輸送体を用いて基質認識部位の解析を行った。Major facilitator superfamilyに属する酵母の高親和性糖輸送体Hxt2と低親和性糖輸送体Hxt1は、各々12個の膜貫通領域(TM)を持ち、両者のTM中のアミノ酸残基は70%同一であった。Hxt2のすべてのTMを対応するHxt1のTMとランダムに置換しキメラ糖輸送体を作成し、糖濃度を制限した寒天培地上で高親和性糖輸送活性を持つクローンを選択し、解析した。Hxt2のTM1,5,7,8が高親和性糖輸送に必須であることがわかった。TM1,5,7,8において、Hxt1,Rxt2間で計20個のアミノ酸が異なっている。これらのHxt2のアミノ酸を、対応するHxt1のアミノ酸とランダムに置換したすべての組み合わせの変異体を作成し、その糖輸送活性の解析を行った。Hxt2のTM5のLeu-201が高親和性糖輸送に必須であり、Cys-195とPhe-198が補助的役割を担っていることが明らかになった。この3個のアミノ酸は膜貫通ヘリックスの同じ側面にあり、糖輸送のpathwayを形成していることが示唆される(J.Biol.Chem.279,30274-30278,2004)。 現在、上記20個のアミノ酸のうち、少なくとも、Leu-201を含む9個のHxt2のアミノ酸があればTM中の他のすべてのアミノ酸がHxt1由来であっても高親和性糖輸送活性をもつことが明らかになってきた。これら9個のアミノ酸は基質認識に直接関与する可能性が高く、糖認識部位の3次元構造の構築の出発点として重要な情報を得たと考えている。
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