研究概要 |
糖輸送体の分子機構の解析を目標として、全ゲノム配列が明らかになっている酵母Saccharomyces cerevisiaeの糖輸送体を用いて基質認識部位の解析を行った。糖に対する親和性の高い糖輸送体Hxt2と親和性の低い糖輸送体Hxt1の膜貫通領域(TM)の網羅的なキメラ糖輸送体を作成しその性質を解析することによりHxt2のTM1,5,7,8の4個の膜貫通領域が高親和性糖輸送に必須であることを見出した。Hxt2より糖親和性がさらに高いHxt7を用い、Hxt1との網羅的キメラ輸送体の解析から、その高親和性糖輸送にはHxt7のTM5,8が必須であることが明らかになった。2つの高親和性糖輸送体、Hxt2とHxt7、に共通する高親和性糖輸送に必須の膜貫通領域TM5,8の役割を明らかにするため、Hxt7に存在する11個のCysをAlaまたはThrで置き換えた高親和性糖輸送活性を有するCys-less Hxt7を構築した。このCys-less Hxt7を用いTM5及びTM8を構成する各々21個のアミノ酸残基をCysで置換するCys scanningを行った。親水性SH阻害剤pCMBSによる糖輸送活性の阻害は、TM5においては4個、TM8においては5個のCys置換体で見られ、それらのアミノ酸残基の位置は各TMの細胞外側部分にあり、各TMにおいてひとつの側面上にあり、基質を通過させるポアに面していることを示唆していた。現在、各種SH架橋剤(o-PDM,p-PDM,Cu/o-Phenanthroline)を用い、TM5とTM8の相互位置関係の情報を収集し、基質認識部位の3次元構造を調べている。
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