研究概要 |
アミノアシルtRNA合成酵素の一つであるトリプトファニル-tRNA合成酵素(TrpRS)は、in vitroにおいて、エラスターゼによってN末端部分を欠くT1、T2-TrpRSを生じ、血管新生抑制作用を有することが報告されている。遅延型過敏症(delayed-type hypersensitivity, DTH)反応を惹起した皮膚反応局所において、TrpRSの発現が上昇するとともに、T1、T2-TrpRSに相当するタンパク質が増加することが明らかになったため、TrpRSが血管新生抑制によるDTH反応の回復に関与している可能性を検討した。組換えT2-TrpRSをモルモットの皮下に投与し、DTH反応を惹起した時の発赤面積の経時変化を調べたところ、コントロールとしてBSAを同量皮下に投与したものと比較して、個体差はあるものの発赤の程度が低下する傾向が認められた。 TrpRSの発現はIFN-γによって誘導され、IFN-γは皮膚に存在するCD4^+T細胞から発現することが報告されているため、IFN-γの遺伝子発現の制御がDTH反応およびTrpRS発現に影響を与える可能性を考えた。そこで、ジーンガンを用い、green fluorescent protein(GFP)を融合させたIFN-γ発現ベクターをモルモットの皮膚に遺伝子導入し、同時にDTH反応を惹起した。その結果、DTH反応の惹起に伴うIFN-γの発現に加え、導入した発現ベクターに由来するIFN-γの発現が見られ、IFN-γの発現の程度を反映した発赤の増加、および組織レベルでの変化(肥厚および浸潤細胞の増加)が認められた。また、GFPに対するショートヘアピンRNA発現ベクターをIFN-γ/GFPとともにモルモットの皮膚に導入したところ、IFN-γ/GFPの発現が抑制され、DTH反応の惹起によって、外来IFN-γ発現に伴う発赤の増加や組織レベルでの変化が抑制される傾向が認められた。
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