研究課題
甲殻類においては既にアラトスタチンやFLRFアミド関連ペプチドが多種類同定されているが、その生体内における生理作用については不明な点が多く、また遺伝子についても全く明らかにされていない。そこでザリガニの脳・神経節より両者の前駆体タンパク質のcDNAクローニングを行った。DNA配列を解析した結果、FLRFアミドの前駆体はAYSDRNFLRFamide、SRNFLRFamide、ALDRNFLRFamide、DRNFLRFamide、APQRNFLRFamideを1コピーずつ、NRNFLRFamideを2コピー含む構造であると推定された。一方アラトスタチン前駆体は、AGPYAFGLamideを4コピーとSGPYAFGLamideを3コピー、さらに22種類のアラトスタチン様ペプチド(-YXFGLamide)と3種類の推定ペプチド[-(Y/M)(G/S)Lamide]をそれぞれ1コピーずつ含むマルチプルな構造を有していた。次にこれらペプチドと我々が現在までに明らかにしたオルコキニンやSIFアミド、タキキニン関連ペプチド(TRP)の存在部位を解析し比較するためにまずRT-PCR解析を行ったところ、何れのペプチドも脳と腹部神経節の両者で発現していることが判明した。ザリガニの腹部第六神経節は肛門による水分調節を支配していると考えられており、これら神経ペプチドが関与している可能性が示唆された。さらに脳内におけるin situ hybridization解析を行った結果、FLRFアミドやアラトスタチンは主にcluster 9に細胞体を有する介在神経で発現しており、TRPやオルコキニンはcluster 9と11の両者にある多数の介在神経で共発現していることが判った。一方、SIFアミドはcluster 10にある大部分の投射神経で発現していることが明らかとなった。これらの結果は、FLRFアミドやアラトスタチン、TRP、オルコキニンというペプチド群がolfactory lobeに投射された嗅覚情報に対する神経修飾物質としての機能を有し、SIFアミドについてはそれらの結合された情報を受けて眼柄内前脳への出力を担う神経ペプチドであることを示唆するものである。
すべて 2004
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