研究概要 |
α-lactalbumin(α-LA)はミルクに含まれる123残基からなるカルシウム結合蛋白質で、β-1,4-ガラクトース転移酵素の基質選択性の補因子機能をもつ。α-LAの構造は天然状態において、N末端側1-34残基とC末端側86-123残基にα-helical構造を形成し、中間の35-85残基はβ-sheet構造を持つ。低pHやカルシウムフリーの条件下では折りたたみ中間体(MG状態)を形成する。 一方、ヒトミルクから単離されたオレイン酸-α-LA複合体が癌細胞死を誘導する新たな機能が報告された。しかし、生物種ごとのα-LAのMG状態形成との関係や、α-LAの活性化部位、オレイン酸結合部位などの詳細は不明である。本研究ではαラクトアルブミンとオレイン酸の混合溶液に熱処理を施すことで複合体が得られること、また酸性Molten Globule状態のαラクトアルブミンとオレイン酸の混合溶液から複合体が得られることを発見し、複合体形成工程がより簡便になった。これらの手法を用いて調製した複合体について腫瘍細胞を用いたアポトーシスの活性評価を行った。トリパンブルー及びMTS cell proliferation assayの結果、アポトーシス誘導後6時間以内にL1210細胞の約90%が死滅することが明らかになった。本研究をとおして、αラクトアルブミンが既知のβ-1,4-ガラクトース転移酵素の基質選択性の補因子機能をもつこと以外に、αラクトアルブミンとオレイン酸の特殊な複合体(変性体)が生物学的に重要なアポトーシス誘導型αラクトアルブミンの創出できる成果が得られた。
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