研究概要 |
本年度は、DNAミニヘアピン分子に対して、マルチカノニカル分子動力学法およびLES(Local Enhanced Sampling)法による網羅的な構造サンプリングを行い、ヘアピン構造の安定性の配列依存性を解析した。マルチカノニカル分子動力学法では、前年度で決定したシミュレーション条件(温度範囲:325-600K)を用いて、dGC(GGA)GCに対して200nsのサンプリングを行った。シミュレーション中に天然構造との重原子r.m.s.d.が1.75Åである構造を得たが、主鎖骨格は似ていたものの塩基対の掛け違えが起きた構造であることがわかった。さらに290-800Kでも低温部に至るまでフラットなエネルギー分布が得られることがわかったので、この条件下でdGC(GAA)GCに対して500nsのサンプリングを行い、天然構造との重原子r.m.s.d.が2.14Åである構造を得た。この構造も、主鎖骨格は天然構造と類似しているが、塩基対が完全ではなかった。さらに1,2,6,7番目の塩基対を保持したうえで、ループ部に対してLESによるサンプリングを行った。対象は、安定なdGC(GNA)GC(N=A,G,T,Cの4通り)および不安定なdGC(GAG)GC,dGC(GAC)GCとし、約10nsのシミュレーションを各配列につき数回行った。その結果、安定なdGC(GNA)GCについて天然構造と類似の構造が得られた。refolding過程を詳細に解析したところ、N=A,G,T,Cによらず、5番目→3番目→4番目の順に塩基がステムの上にスタックする共通のパスウェイが観察され、塩基配列の違いによるヘアピン構造のとりやすさの違いのメカニズムの一端を明らかにすることができた。以上の結果は、11月に札幌にて開催された生物物理学会年会にてポスター発表を行い、また現在投稿準備中である。
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