研究概要 |
ミオシンの運動メカニズムとして今まで広く信じられてきた"首振り説"が本当に正しいかどうか証明したい。単なる首振り運動ではなく、"バイアスのかかった熱ゆらぎ運動"で説明できそうである。どちらが正しいかは今後様々な方法で検討されるべき重要な問題ではあるが、2002年に私達が学術論文で発表したミオシンがアクチンに結合することによりアクチンフィラメント上に"ホットスポット"を呼び起こすという仮説から、さらに一方向に動く決め手に成りえる証拠をだしたい。 17年度は、先ず、(1)1分子イメージング技術を用いてミオシンV,VI共に運動進行方向側にそれぞれ次のミオシンが結合し易い事が解り、先に電子顕微鏡像から得られた活性化状態のアクチンのホットスポットの存在をコンファームした。続いて、(2)アクトミオシン相互作用時にアクチンが回転するという実験結果に非常によくあう結果を計算機実験から得た。すなわち、ミオシンは熱ゆらぎで運動するが、その際アクチンフィラメントが90度程度回転することを我々は論文に報告し(Kitamura K.et al.BIOPHYSICS 2005)、アクチン側の重要性は回転とも密接に関与していると考える。さらに、(3)16度から行っている活性化状態のアクチンを鮮明に観察、解析するために必要不可欠なアクチン変異体作成もバキュロウイルスの発現系を用いてさらに進めた。アクチンの回転を効果的に実時間で観察するためには結合した蛍光色素自体が回転しないようにアクチンフィラメントの角度に配慮して表面の異なる2カ所のチオール基へ2反応性蛍光色素を安定に導入することにした。現在、in vitro motility assayを用いて蛍光色素で標識したF化アクチン組換え体の活性を調べながら、無標識のウサギアクチンと共重合させ回転が観察できる系を立ち上げつつある。一方、(4)低濃度のATP存在下、ミオシンVとアクチンフィラメントを相互作用させるとミオシンの結合部位周辺だけアクチンフィラメントの構造が少しねじれることが電子顕微鏡像から得られた。ミオシンの結合に伴い、次にミオシンが相互作用し易い部位をアクチンがあえて露出させている可能性が出てきた。この研究結果からも、ホットスポットの存在がまさに明らかにされようとしている。
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