研究概要 |
AAA-ATPase(ATPases associated with diverse cellular activities)は、細菌からヒトまで広く保存されているタンパク質ファミリーであり、その分子中央部分に、約200アミノ酸残基からなるAAA-ATPaseドメインを有することを特徴とする。これらの分子は、ATP加水分解エネルギーを利用して、タンパク質のunfoldや複合体の解離を行う点が共通していると考えられる。AAA-ATPaseはこのAAA-domainを一つ有するType Iと2つ有するType IIに大別される。また、プロテアソーム19SサブユニットのようにN末端部分にドメインを持たないもの、NSFなどのようにN末端に250残基程度の配列を有するもの、PEX1のように更に長い(~500残基)配列を有するものなどがある。研究代表者らはAAA-ATPaseのN末端部分に存在する、各分子固有の配列を解析し、そこから構造決定可能な新規タンパク質ドメインを単離した. 具体的には,チューブリンを切断するAAA酵素katanin p60サブユニットと,核内でリボソーム複合体のアセンブリに関与するNVL2から,新規のN末端ドメインを単離し,発現精製の後NMR解析を行った.両者とも核となるドメインの直後にコイルドコイル領域が存在し,その部分の配列をデザインし欠失変異を導入することで,はじめて立体構造解析可能な試料を得ることができた.現在両者のドメインについて,立体構造決定の精密化の途上であり,基本フォールドが明らかになった.合わせてモデルとなるコイルドコイルの分子設計に関しても構造学的知見を得た. また,katanin p60類縁のType I酵素Vps4のN末端から,構造未知のMITドメインを単離し,その立体構造決定を行った.MITドメインには,標的となるESCRT-III複合体の結合部位と考えられる,分子表面の特徴的な溝が存在することが明らかになった. さらにN末端ドメインをもたないプロテアソームについては,基質認識を行うシャトル因子と呼ばれる別のタンパク質が介在しているが,そのうちの一つDsk2についてUBAドメインとユビキチン複合体の構造決定を行った.
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