研究課題
前年度に引き続き、ILF2/ILF3の転写活性について研究を進めた。ILF2/ILF3は二本鎖RNAに結合し、ウイルス感染に対する防御機構への関与が想定され。ILF3とPKRの結合を詳細に検討すると、ILF3は非リン酸化型PKRとは強く結合するが、リン酸化型PKRとは全く結合しないことが示された。また、昨年報告したILF3とSRF、Elk-1、ATF1、CREBとの結合も二本鎖RNAによって弱まることが分かった。この結合様式の変化はdsRNA結合能を欠損したILF変異体では見られなくなり、二本鎖RNAの結合が結合変化と直接関係していることが分かった。これらより、二本鎖RNAがc-fosの転写を制御する際には、PKRとILF3およびSRF、Elk-1、ATF1、CREBとILF3の結合様式が大きく変化し、こららに複合体にダイナミックな変化を引き起こしていることが示唆された。さらに、試験管内では二本鎖RNAがc-fosの転写を低下させることより、c-fosのRNAとILFとの結合がc-fos RNAによる転写のネガティブフィードバックに関与している可能性が考えられた。また、ILFはPRMT1、PRMT2、PRMT5などとも結合することが示された。PRMTはタンパク質のアルギニン残基をメチル化するが、近年ヒストンのアルギニン残基をメチル化が転写活性化に関与していることが報告されている。このことより、ILFはヒストンのメチル化を介してc-fosの転写活性化に関与していることが予想される。今後は、以上の仮説を細胞レベルでも検証する予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Molecular Medicine 42・9
ページ: 973-981
J.Biol.Chem 280・12
ページ: 11467-11474