核膜崩壊機構を、クロマチンと結合する核膜内膜蛋白質のラミンB受容体(LBR)とエメリンおよび、細胞周期依存的なツメガエル卵抽出液を用いて調べ、次のような結果を得た。 (1)分裂期抽出液中のcdc2キナーゼと未知キナーゼによるLBRのリン酸化によって、LBRとクロマチンの結合が阻害される。 (2)エメリンは分裂期サイトソル中のキナーゼによってリン酸化されてクロマチンと解離し、このとき、49、66、120および175番目のセリンと67番目のスレオニン残基がリン酸化される。 (3)エメリンはクロマチン上のBAFと結合しており、この結合がリン酸化で調節されている。 (4)エメリンの点突然変異体を用いた解析で、175番目のセリンのリン酸化がエメリンとBAFとの結合を調節していることが示唆された。 (5)エメリンとBAFの解離に働く分裂期サイトソル中のキナーゼは、cdc2キナーゼと未知のキナーゼであることが推測された。 これらの結果より、細胞周期のM期における核膜崩壊(核膜とクロマチンの解離)には、cdc2キナーゼと他の未知のキナーゼによるLBRとエメリンのリン酸化が働いていることが示唆された。 一方、核膜形成期の調節機構については、細胞周期依存的なツメガエル卵抽出液を膜成分とサイトソル成分に分け、膜成分のクロマチンヘのターゲティングを調べ次のような結果を得た。 (1)分裂期抽出液から調製した膜成分はクロマチンに結合しなかったが、合成期のサイトソルで処理するとクロマチンに結合するようになった。 (2)この時合成期サイトソル中で働いている成分は、蛋白質脱リン酸化酵素1であることを、酵素阻害剤と特異抗体を用いて示した。 これらの結果より、M期からS期に移行する核膜形成時には、蛋白質脱リン酸化酵素1による膜蛋白質の脱リン酸化、特にLBRの脱リン酸化が重要であることが示唆された。
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