研究課題
HB-EGFはEGFファミリーに属する増殖因子であり、EGFRと結合し細胞にシグナルを伝達する。HB-EGFの機能的特徴の一つはヘパリン結合性を示すことである。HB-EGFはヘパラン硫酸糖鎖(HS)との結合によりその増殖因子活性が昂進する。しかし通常組織ではHSは主にコア蛋白と結合したヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)として存在している。そこで、細胞表面のHSPGに結合したHB-EGFのEGFR発現細胞に対する活性を解析したところ、遊離HS添加時とは逆にHSPG結合型HB-EGFではその活性が増殖抑制に転換することを見いだした(昨年度)。本年度、さらにこの現象についてEGFR発現細胞側の機構解析を行ったところ、遊離型HB-EGFによる細胞増殖促進においてはEGFRおよびその下流のMAPKシグナル系の活性化が一過性であるのに対し、HSPG結合型HB-EGFの場合、これらの持続的な活性化が起こり、その結果EGFR発現細胞の細胞周期停止が起こることを明らかにした。さらに、HB-EGFのHSPG相互作用の生理的意義の解明を目的として、HSとの結合能を欠いた変異HB-EGF(ΔHB)発現ノックインマウスを作製したところ、このマウスはKOマウスと同様に、心臓弁形成過程で間質細胞の過増殖がおこり、心臓弁肥厚を呈することを見いだした(昨年度)。本年度、さらにこの表現型を詳しく解析したところ、このマウス心臓弁では正常にHSPGが発現していたが、間質における分泌型HB-EGF蛋白の局在が減少しており、その結果この変異マウスではHB-EGFが間質内のHSPGと結合できないことで正常な局在ができず、機能的欠失となっていることを明らかにした。これらの解析結果から、HB-EGFはHSPGと結合することで増殖促進から抑制に活性転換し、このことが生理的(心臓弁形成過程)にも重要であることが示された。
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