Ras依存的非アポトーシス性プログラム細胞死のin vitroモデル実験系を用い、Rasから非アポトーシス性細胞死に至るシグナル伝達の制御機構について検討を行った。これまでの解析結果からRas依存的に制御されるnon-apoptoticプログラム細胞死はミトコンドリア膜透過性亢進の関与しないプログラム細胞死であることが判明している。またPI3キナーゼを介する細胞内シグナル伝達経路およびRacがRas依存的細胞死のシグナル伝達に重要な役割を果たしていることも明らかにしている。これに加えて最近RhoAやCdc42等Rac以外のRhoファミリータンパク質もRas依存的細胞死の制御に関与していることが明らかになった。 一方、Bcl-2ファミリータンパク質はミトコンドリアを介する非アポトーシス性プログラム細胞死の制御に関与していることが知られている。しかしながら、Bcl-2ファミリータンパク質による細胞死制御の分子機構ついてはまだ重要な点に未解明の部分が残されている。その代表がBH3-onlyタンパク質によるミトコンドリア膜透過性亢進のメカニズムである。そこでBH3-onlyタンパク質の一つであるHrkの標的分子を酵母two-hybrid screeningにより探索したところ、Hrkがミトコンドリア膜チャネル形成タンパク質であるp32と結合することが明らかになった。さらにp32の優性抑制変異体やsiRNAを用いた機能解析の結果、p32の発現・活性がHrkによる細胞死誘導に必須であることも確認された。以上の結果よりBH3-onlyタンパク質Hrkはp32と結合しそのチャネル活性を制御することによってミトコンドリア膜透過性を変化させている可能性が考えられるようになってきた。
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