アフリカツメガエル幼生尾部の再生をモデルシステムとして用い、器官再生を可能とするメカニズムを明らかにする目的で研究をおこない、当該研究期間に以下の成果を得た。 幼生尾部再生過程で発現上昇・低下する遺伝子群を網羅的に同定し、それらの時間空間的発現パターンを解析した結果、再生初期に発現上昇するもの(初期遺伝子)、再生中期に上昇するもの(中期遺伝子)、再生過程で一旦発現低下した後再生後期で発現上昇するもの(後期遺伝子)の3種類に大別された。再生中・後期に発現上昇する遺伝子群の多くが組織特異的な発現を示すことから細胞分化に関与することが示されたが、再生初期に発現上昇するグループには組織非特異的に発現する遺伝子が多く、シーケンス情報から炎症、治癒、細胞増殖などに関与することが示唆された。さらに、初期遺伝子のひとつxATF-5を初期胚で過剰に発現させたところ神経組織の肥大が観察され、神経幹細胞の増殖を制御することが示唆された。 尾部の背側から昼間部まで切れ込みを入れた場合でも、尾部切断と同じ種類の組織に損傷を与えることができ、細胞の増殖や分化もおきるが、尾部を切断した場合のような器官としての尾部再生はおきない。Xwnt-5aが尾部再生過程の先端部で強く発現するが切れ込み部分では発現しないことを見いだし、これを強制発現させた組織(anima cap)を切れ込み部分に移植したところ、異所的な尾部が誘導された。この活性はXwnt-5a特異的であり、これにより制御される基部-先端軸に沿ったシグナルが尾部の器官再生に必須であることが示唆された。
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