研究概要 |
非拡散性の細胞位置決め分子を具体的に明らかにし、これに基づいて多細胞の形態形成のシミュレーションを行うことが当研究のテーマである。このためには、ここに機能する分子と機能の場である細胞の幾何学モデルが必要である。分子としては、細胞位置決め分子がephrin/Ephのリガンド・リセプター対が一つ明確になっているが、多細胞の幾何学モデルとしては我々独自で開発しなければならない。他に間にあうようなモデルはない。 このような理由から、3D vertex dynamics modelをベースとした3D細胞モデルをつくり、これの有効性のチェックとして、細胞塊(桑実胚)が中空の袋(胚盤胞)をつくる哺乳類の初期発生のシミュレーションを行っていることは昨年に報告した。その後改良を進め、この研究成果は論文原稿としてまとめた。現在投稿中である。 この間に、細胞位置決め分子の概念の拡張として、細胞の方向をきめる機構があり、その機構とカップルして細胞塊が特定方向に伸長するなどの形態形成を行う機構が存在する事に気がついた。上皮細胞には平面内細胞極性(Planar Cell Polarity)をつかさどる遺伝子が明らかにされつつある。恐らくこのような機構によってと考えられるが、上皮細胞が示す多角形のうち体軸に直角な辺にだけミオシン分子が局在し、これらの細胞からできた領域は体軸方向に伸長する事が報告された。この考えが正当かどうかは我々の細胞モデルでチェックできる。細胞90個ばかりでできた袋についてz軸に垂直な辺が強く収縮すると仮定すると、袋は本当に細長くなった。一つひとつの細胞をマークすると細胞間インターカレーションが起こっていた。形態形成を起こす機構としてインターカレーションが長年の間考えられていたが、これは細胞たちが自分たちで起こすことができる現象であることがわかった(日本発生生物学会第39回大会・広島市6/3、3C1445;第62回形の科学シンポジウム・大阪大学11/3;EABS & BSJ 2006日本生物物理学会の国際会議・沖縄11/12-14,1P332)。 インターカレーションにはこれとは別のタイプのものがあるように考えている。これについても細胞モデルを使って詳しく研究する予定である
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