スズキ類ノトセニア亜目魚類での極限環境における適応進化と集団動態を調べるために、平成16年度はノトセニア亜目のライギョダマシについて主要組織適合複合体(MHC)遺伝子およびミトコンドリア遺伝子の研究を行った。(実験材料についてアメリカ合衆国イリノイ大学のArt De Vries教授、C.-H.Christina Cheng助教授およびワシントン州Benaroya Research Institute at Virginia MasonのChris T.Amemiya教授の協力を得た。)その結果、ライギョダマシにおいてミトコンドリアのDループ領域(242bp)および16SRNA(450bp)領域で塩基多様度が0.000と0.001-0.002となり、調査したサンプルでは遺伝的な多様性が低いことが示された。サザンブロット解析で個体によりバンド・パターンが異なり遺伝子座の数が多型な可能性もあるMHCクラスIIβ遺伝子については、BACクローンを用いてゲノム構造の解明を進めている。実験計画当初、MHCクラスIIβ遺伝子の近傍に座すると想定されていたクラスIIα遺伝子はいまだに発見されず、そのクローニングには至っていない。MHCクラスIIβプローブを用いてスクリーニングされたBACクローンのフィンガー・プリンティングを行ったところ、その多くが重なり合わないことが明らかになり、ゼブラフィッシュのように複数の遺伝子座が異なるゲノム領域に散在している可能性もあげられた。またMHCクラスIIβ遺伝子のcDNA解析から、発現している遺伝子が少なくとも二つのグループに分けられ、それらが二つ以上の異なる遺伝子座に由来すること、各々のグループでは多くの非同義置換を含んだ差が見られることも示された。 さらに次年度の研究の比較対照実験に用いるノロゲンゲのサンプル採集も行った。
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