研究概要 |
マメ科植物のゲノム研究の発展のためには、ゲノムのDNA配列と染色体の形態に基づく細胞学的遺伝情報を関連させることができる染色体地図の構築が重要である。本研究では、ダイズやクローバーなどと同一のマメ科作物のモデルとして、広く研究に用いられているミヤコグサ(Lotus japonicus,Miyakojima MG-20)を用い、染色体地図を構築した。ミヤコグサでは、これまでに有糸分裂染色体前中期における定量的な染色体地図が報告されているが、有糸分裂前中期染色体は過凝縮のため解像度が低く、隣接する遺伝子やDNA配列の区別が難しいことが問題であった。 本研究では空間分解能を向上させ、より詳細な組換え価との比較を行うため、有糸分裂前中期染色体の約3-6倍の長さがある減数分裂期の染色体を用いることにより、ヘテロクロマチン、ユークロマチン、セントロメア、テロメアなどの細胞学的特徴を定量的なイディオグラムとして示した。このイディオグラム上に45S rDNA、5S rDNAをランドマーカーに、新規の特異的反復配列、28種類のTACクローンをFISH法で位置づけ、パキテン染色体用に改良した染色体画像解析システム(CHIAS)を用いて、定量的なパキテン期染色体地図を構築した。これにより、ヘテロクロマチンやユークロマチンなどの細胞学的特徴とDNA配列を関連付け、ミヤコグサ染色体地図を完成した。 有糸分裂前中期染色体地図、パキテン期染色体地図、組み換え価に基づく連鎖地図の比較を行った結果、オオムギなどと同様に、ミヤコグサ染色体末端領域では、相対的に組換え価が高く、セントロメア領域では、組換えが抑制されていることが明らかとなった。3つの地図情報を統合したミヤコグサゲノム統合地図は、今後のマメ科植物における、DNAマーカー育種やバイオテクノロジーを駆使した分子育種の進展に大いに寄与するものと考える。
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