研究概要 |
本研究課題では、種子休眠および穂発芽に関するコムギの突然変異体を解析し、穂発芽の発生に関わる要因を遺伝学的に解剖することを目的としている。今年度は、既に得られている突然変異系統の特性評価および新規の穂発芽突鉢変異体の作出を行った。 1.種子休眠性低下突然変異系統RSDの特性評価 (1)種子発達段階とABA感受性の関係:発達段階の異なる種子における休眠性およびABA感受性を調査した。野生型である農林61号に比べてABA感受性が低下するのは、RSD26およびRSD32では開花後30日(DPA30)以降、RSD14-1およびRSD16-1ではDPA40以降であった。 (2)発芽抑制に対するABA濃度依存性:DPA40の半切種子を10^<-6>〜10^<-3>MのABA溶液で処理し、発芽に及ぼす影響を調査した。RSD系統のスクリーニングに用いた10^<-5>Mでは突然変異系統間の差は明瞭ではなかったが、10^<-4>Mでは突然変異系統間の発芽率に差が認められ、ABA感受性の程度に差が存在することが明らかとなった。 (3)遺伝分析:農林61号、RSD12,RSD14-1,RSD16-1,RSD32の間で交配を行い、F_1種子における休眠性を調査した。その結果、RSD14-1およびRSD12は優性突然変異、RSD16-1およびRSD32は劣性突然変異であることが明らかとなった。 2.穂発芽関連突然変異系統のスクリーニング 農林61号をアジ化ナトリウム処理したM_5集団からDPA40-50の穂を約2100本採取し、穂の状態で吸水させることにより穂発芽突然変異体のスクリーニングを行った。発芽歩合の高い42穂を選抜した後、温室で育成し、現在26系統から自殖種子を得ている。 3.マッピング集団の作成 突然変異系統の原因遺伝子の座乗位置を特定するために、マッピング集団作成用の交配を行い、現在F_1植物を育成中である。
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