研究課題
米の品質劣化を防止し貯蔵性を向上させることは、ポストハーベストにおける最も重要な課題の一つである。米の品質劣化には脂質の分解・酸化が関係し、遊離脂肪酸(FFA)の増加による物理性の悪化や古米臭の発生が指摘されている。FFAは、ホスホリパーゼD(PLD)の作用により細胞内顆粒(スフェロゾーム)が崩壊することにより生成される。そこで本研究は、最近明らかになったPLDの一部が欠失したイネ(ND)においては、米の品質劣化がどの程度防止できるかを明らかにすること、ならびにPLDが完全に欠失したイネ系統を選抜することとを目的とし行う。1)一次選抜。2003年に収穫したM2種子を対象としPLD完全欠失粒のスクリーニングを行ったところ、2株でPLDが欠失した粒を含んでいた。これらの株の測定粒数を増やしたところ、「03-s108」では10粒中2粒がPLD欠失であったので、二次選抜を行った。2)02年産二次選抜。二次選抜を行った「T53」株および「P1122」株からは、不稔株とヘテロ株は得られたが、劣性ホモ株は得られなかった。また、P1122をND0052と交配したが、十分に稔実したF1種子は得られなかった。3)03年産二次選抜。PLD完全欠失系統候補「03-s108」のM2株、29株を用いて二次選抜を行った。そのうち、株16は十分に稔実し、6粒中6粒がPLD欠失であり、種子のPLDが完全に欠失していることが示唆された。なお、株7もPLD欠失株であったが、極めて強い不稔性があった。4)ND0052の貯蔵とFFA含量。日本晴とND0052の玄米中のFFA割合は、何れの系統についても貯蔵にともない増大したが、必ずしもND0052のFFA割合が日本晴よりも少ない結果は得られなかった。今回用いた試料は穂発芽している可能性が高いので、次年度に再試を行う。
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