1.新規ベクター骨格の構築:PseudomonasプラスミドpVS1の複製関連タンパク質遺伝子repAのタイプ〔野生型と2種類の変異型、すなわちプラスミドコピー数を下げる点変異〔Low copy(LC)〕と上げる点変異〔High copy(HC)の計3クラス〕と、プラスミド安定化領域par(pSC101由来)あるいはsta(pVS1)の組み合わせが、細菌におけるベクターの安定維持に寄与すると仮定し、各種repAにstaあるいはparを加えた種々のプラスミドを、大腸菌とアグロバクテリウムの双方で複製可能なシャトルベクターとして構築した。 2.アグロバクテリウムにおけるプラスミド安定性検定:各プラスミドを有するアグロバクテリウム系統を無選抜条件(薬剤なし)で液体培養し、増殖した細菌の一部を無選抜寒天プレート、次に薬剤選抜プレートにて培養した。上記液体培養の一部を百万倍に希釈してさらに液体培養を継続し、前述の寒天培養を行った。このような操作を繰り返すことで各プラスミドの安定性を評価した。その結果、比較的コピー数が高いrepA-HC系プラスミドでは、安定化領域を欠いてもプラスミドが比較的安定に維持されることが判明した。またpar領域(0.4kb)を含むプラスミドは、sta領域と同様、repA-WおよびrepA-LC系プラスミドの安定性向上に寄与することが判明した。 3.プラスミド誘導体(植物用発現ベクター)の構築と植物への形質転換:上記の結果を元に、安定度の高いプラスミド骨格に植物用選抜マーカー遺伝子、レポーター遺伝子、マルチクローニング部位等を有する種々の新規バイナリー型発現ベクターを構築中である。 17年度は、これら最小バイナリーベクターを、組織培養を用いないin planta法でシロイヌナズナに、組織培養を用いる形質転換法でイネ等に導入し、形質転換効率や挿入コピー数などを解析予定である。
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