発芽の季節性制御機構の解析(高温発芽阻害の生理機構モデル構築とその生態的意義の検証):冬季一年草の種子発芽の季節的タイミングは高温発芽阻害によって決定され、高温発芽阻害にはアブシジン酸の生合成促進が関与する。発芽研究のモデル材料であるレタスからアブシジン酸生合成律速酵素9-シス-エポキシカロチノイドジオキシゲナーゼ遺伝子5種類を単離して発現解析したところ、高温発芽に主要に働く酵素はレタスとシロイヌナズナでは異なることが判明し、冬季一年草種子発芽の季節性制御機構には種多様性があることが示唆された。また、土中種子の生態的温度応答性を正しく評価するために種子を土塊ごと用いる発芽試験方法を開発し、越年草のミドリハコベは一・越年草のコハコベに比べて夏季における埋土種子の発芽上限温度が約5℃低いことを実証した。 開花の機会性制御機構の解析(未発芽種子バーナリゼーション候補遺伝子の機能解析):冬季一年草ヒメムカシヨモギにおいて、種子へのヒストン脱アセチル化阻害剤トリコスタチンA処理が花成を誘導した。一方、DNAメチル化阻害剤5-アザシチジン処理では花成誘導が起こらなかった。この結果から、未発芽種子バーナリゼーションには緑植物バーナリゼーションとは異なる遺伝子のエピジェネティック調節が関与すると推察される。ヒメムカシヨモギ種子からサブトラクションによって単離した未発芽種子バーナリゼーション候補遺伝子30クローンには、既知のバーナリゼーション遺伝子と相同性が高いものがなかった。したがって、これら30クローンのうちエピジェネティクス機能を持つものは、新規なバーナリゼーション遺伝子であることが期待される。
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