研究概要 |
サツマイモの根よりサイクリンD3のcDNAを単離し,Ipoba;CycD3;1と名付けた.Ipoba;CycD3;1にはLxCxEドメインとサイクリンボックスが存在し,タバコのNicta;CycD3;2と57%の相同性を示した. 器官別(葉身,葉柄,ほふく茎,不定根,塊根及びいも根)のIpoba;CycD3;1遺伝子の発現は全ての器官で認められたが,塊根での発現レベルが最も高かった.また,塊根形成過程の根においてIpoba;CycD3;1遺伝子の発現レベルは塊根形成が開始される時期に最も高まった. サツマイモでは塊根形成にともなって,まず根のスクロース含量とサイトカイニン含量が高まり,やや遅れてアブシジン酸含量が高まることが報告されている.そこで,Ipoba;CycD3;1遺伝子の発現に及ぼすスクロース,ベンジルアデニン及びアブシジン酸の影響を検討した.Ipoba;CycD3;1遺伝子の発現レベルはスクロース濃度が高まるにつれて高まった.ベンジルアデニンは10μMではIpoba;CycD3;1遺伝子の発現に影響を及ぼさなかったが,100μMでは遺伝子発現を抑制した.また,アブシジン酸の濃度が高まるにつれてIpoba;CycD3;1遺伝子の発現レベルが低下した. 以上の結果より,サツマイモのIpoba;CycD3;1遺伝子は塊根形成開始期の根において重要な役割を果たしており,スクロース,サイトカイニン及びアブシジン酸による発現制御を受けていることが示唆された.
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