研究課題
基盤研究(C)
倒伏は、収量、品質並びにコンバインによる収穫効率の低下を引きおこすイネの栽培における最も深刻な障害である。現在まで短稈化が主要なターゲットとして育種が進められてきた。一方で短稈化は、バイオマス生産性を低下させる。そのため短稈化に換わる新たな耐倒伏性ターゲットが望まれていた。植物体の支持力を高めることは耐倒伏性向上に繋がると考えられていた。しかしながら、植物体の支力の評価方法は確立されておらず、遺伝学的な研究はほとんど行われていなかった。特定の量的形質遺伝子座(QTL)を除いた染色体領域がコントロールと相同である準同質系統は、目的形質を決定する生理学的なメカニズムの解析に適した供試材料である。本研究において、下位部の支持力を評価する方法を確立しその手法を用いて関与するQTL(pr15)を特定した。更にpr15を導入した準同質系統を用いて、下部のバランス支持力の増強が、耐倒伏性に及ぼす影響を解析した。その結果、染色体部分置換系統の倒伏耐性は日本晴の約2倍の値を示し、pr15が耐倒伏性を向上させることが明らかになった。また、耐倒伏性が非常に低いコシヒカリでもpr15の導入により耐倒伏性が向上した。pr15の作用特性を明らかにするために染色体部分置換系統の形態特性、稈の物理的特性及び化学成分の分析を行った。その結果、下葉の老化の遅れが、稈の炭水化物再蓄積の増加を引き起こし、その結果程の剛性が増加することで、耐倒伏性が向上することが明らかになった。pr15は収量特性等の他の形質に影響を及ぼさないこと並びに複数の環境条件下で作用することが確認されたことから、pr15は実用品種の耐倒伏性の向上において有用性が高いと考えられた。これらの結果から、「下位部の支持力」を高めることが短稈化に換わる耐倒伏性向上に向けた新たなターゲットとなりえることが明らかになった。
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