1.Pelargonium属植物は約250-300種が知られ、van der Walt(1988)は13節に分類している。このように、多数の種から成立しているPelargonium属植物において、種間雑種を作出し、品種を育成する試みを効果的に行うため、節間に跨る種間について、相互に交雑を行い、雌蕊における花粉管行動の観察結果から、これらの間の交雑親和性を推定した。 (1)供試材料は、Hoarea節13種、Pelargonium節7種、Polyactium節1種、Ligularia節3種、Jenkinsonia節1種、Campylia節2種、Glaucophyllum節2種、Cortsusina節1種、Myrrhidium節1種、合計9節31種であった。その結果、交雑親和性の強弱が特定の節間には認められなかった。節内の種間でも交雑親和性には強弱があった。交雑組合せ数の少ない節間もあり、今後さらに調査する必要があるが、交雑親和性は種間に特異的と考えられた。 (2)Hoarea節とPelargonium節とは特に多くの種を供試した。雌蕊内で花粉管が子房にまで到達する割合を見ると、Hoarea節内およびPelargonium節内の種同士では、それぞれ76.6%、75.0%で、これらの節内における各種間の交雑親和性はかなり高いと言えた。また、Hoarea節×Pelargonium節との間における種間での花粉管子房到達割合は55.6%で、その逆交配Pelargonium節×Hoarea節のそれは84.6%で、両者はかなり近縁と考えられた。さらに、両者で種間雑種を作出する場合は、Pelargonium節を種子親に用いる方が良いと考えられた。 (3)子房にまで花粉管の侵入が観察された組合せについては今後実際に雑種作出を行う。 2.Hoarea節内での数組合せの種間雑種を、通常の交雑により作出した。また、種子繁殖性P.×domesticumとHoarea節との間でも胚珠培養により種間雑種の作出にも成功した。 3.これらの結果より、Hoarea節内での種間雑種作出および花が大輪で花色変異に富むP.×domesticumとHoarea節との種間雑種作出などにより、多様な特性を持つ多数個体の獲得が期待できる。
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