研究概要 |
(a)4倍体台木によるワインブドウ栽培の省力化と果実品質向上効果 通常使用される台木品種をコルヒチン処理により染色体倍加することにより育成した4倍体台木に接ぎ木したワインブドウ(品種カベルネ・ソービニヨン)の栄養生長は元の2倍体台木と比較して顕著に抑制された.4倍体台木は生食用ブドウ品種‘巨峰'の場合においても同様に栄養生長を抑制することで夏季の枝梢管理労力を大きく軽減するとともに,果実品質,特に果実着色を顕著に向上させる効果をもたらした.果実肥大期から成熟期にかけて4倍体台木における葉の導管水ポテンシャルは2倍体台木に比べ,常に低く推移した.また,4倍体台木における茎の通水性も元の2倍体台木より小さいことが認められた.これらのことから,4倍体台木では常に適度な水ストレス状態が維持されることによって,穂木品種の樹勢を抑制するとともに果実品質を向上させると考えられる. (b)低投入栽培ワインブドウにおけるarbuscular菌根菌接種源としてのカバークロップの効果 1)火山灰を母材とし有機物に富むがリン酸吸収係数が大きい黒ボク土を満たしたポットに無菌培養により増殖したブドウ台木を移植し,arbuscular菌根菌接種区および無接種区に分け,無施肥条件で育成した.無接種区では葉色が低下し,1か月後には生育停止してしまうのに対し,接種区では健全に生育が継続された.このことから,リン酸が主としてアルミニウムや鉄と結合しているため植物による利用困難な状態である黒ボク土においてもarbuscular菌根菌の生長促進効果が明らかとなった. 2)黒ボク土からなるブドウ園において数種のカバークロップによるブドウ根におけるarbuscular菌根菌感染率を比較したところ,ナギナタガヤにおいて促進効果の比較的高いことが認められた.
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