研究概要 |
サブグループIに属するキュウリモザイクウイルス(CMV)のY系統とサブグループIIに属してタバコへの病原性が極めて弱いYN分離株間のキメラ2b遺伝子を相同塩基配列領域2箇所を利用したアセンブリーPCR法で構築した.6種類のキメラ2b遺伝子と親としたYおよびYN2b遺伝子をCMV-Y RNA2の2b遺伝子欠損cDNAクローンに導入し,それらの転写RNA2をRNA1とRNA3とともにタバコに接種して病徴を比較したところ,Y2bタンパク質のN末端から30番から39番日までの領域が2bタンパク質のタバコへの病原性と関連が認められた.この領域がYN由来(VRNRRARGYE)である場合は常に病徴は軽くて全身移行性が低下し,Y由来(KQNRRERGHK)では親ウイルスであるCMV-Yとほぼ同様の激しいモザイクと全身移行性が観察された.以上から,N末端から30-39番日までのアミノ酸配列中に存在する5アミノ酸の差異が関わることが示唆された.YN分離株は接種葉に近い上位葉では葉脈に沿って部分的な輪紋を生ずるが,次第に上位葉は無病徴となりウイルスもほとんど検出されなくなる.一方,B21分離株は接種葉に退緑斑と白斑を生じ,上位葉ではサブグルーカのCMVに近いモザイクを示す.そこで両分離株から2b遺伝子を単離して塩基配列を決定したところ,両者はともに300塩基6塩基の差異があり,タンパク質レベルではN末端から39番日のアミノ酸のみに差異があった.2b遺伝子が両分離株の病徴の差異と関連するかを調べるため,サブグルーフIのCMV-Yの感染性RNA転写系を用いて,RNA2の2b遺伝子欠損cDNAクローンに両者の2b遺伝子を導入してタバコに接種したところ,両分離株の病徴の差異が再現された.以上から、N末端から39番目のアミノ酸の種類が2bタンパク質の病原性を決定していることが明らかとなった。
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