いもち病菌抵抗性遺伝子Piaを持つ日本晴培養細胞に非親和性いもち病菌胞子を接種した場合の活性酸素生成は親和性菌系に比較して有意に高いが、同じセットの菌系胞子をPiiを持つ「どんとこい」に接種したところ、活性酸素生成量と非病原力遺伝子の有無との間の相関性がみられなくなった。このことは日本晴で観察された差は菌系の違いによるものであること、さらには各菌系から調製した胞子懸濁液中に含まれるカタラーゼ活性の強弱によるものであることが示唆された。そこで昨年度確立したいもち病菌培養濾液からのカタラーゼの部分精製法に従ってP91-15B(race001)の培養濾液からカタラーゼを部分精製し、SDSを含むポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離したのち活性を持つバンドを切り出し、トリプシン消化→高速液体クロマトグラフィーによる消化断片の分取→エドマン法によるアミノ酸配列の解読を行ったところ、得られた結果に完全に一致するタンパク質をコードするいもち病菌の遺伝子1種類を同定することに成功した。この遺伝子産物はカビや細菌のカタラーゼとある程度の相同性を有していることからこれらかと雨声物に特有な単一ペプチドからなるカタラーゼであると推定された。一方胞子懸濁液に含まれるカタラーゼの生理的意義を解明するために、日本晴に親和性の菌系(稲86-137)、を日本晴葉鞘に接種し48時間後にジアミノベンチジン法によってイネ細胞に蓄積する過酸化水素を調べたところ、胞子を水に懸濁した実験区では対照区に比較して有意に過酸化水素の蓄積が観察され、同時に付着器からの菌糸侵入が有意に抑制された。この結果はいもち病菌由来のカタラーゼがいもち病菌の感染初期の菌糸伸長に正の影響を与えることを示唆している
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