研究概要 |
ニホンミツバチの選抜育種は,選抜群5群について刺激に対する温和性,働き蜂の活動性,低逃去性に注目した.その中から2群を選び,女王蜂の人工養成を行い,他の雄蜂選抜群と人工授精による交配を実施した.さらに養蜂家との情報ネットワークを通じて,次年度の交配群として6群のニホンミツバチ蜂群を確保することができた. ニホンミツバチ選抜群の一群を鹿児島県坊津町の熱帯植物機能開発施設のハウス栽培マンゴー(品種アーウィン)に導入した.対照区にはホホジロオビキンバエを用いた.その結果,ハエ区はニホンミツバチ区よりも1花穂における結果数,糖度,可食割合は優れていたが,ニホンミツバチ区は有種子果率,200g以上の大果の割合がハエ区よりも顕著に高いことから,ニホンミツバチがマンゴーの花粉媒介に有効であることが認められた. キャンパス農場内のハウス栽培パッションフルーツ(品種サマークイーン)にニホンミツバチ選抜群を導入した.働き蜂の出巣数,訪花活動は活発で,特に1花に数匹の働き蜂が訪花し,花粉採集する様子が観察された.しかし働き蜂は雄蕊から花粉を積極的に採集するが,柱頭への花粉の付着は著しく少なかった.パッションフルーツの花の構造は,柱頭は雄蕊より上にあるため,下方の葯から花粉を採集してしまうことに原因があると考えられた.開花後,2〜3時間で柱頭は葯の方に湾曲し接近または接触してくるため,その時点でニホンミツバチの訪花飛来が行われることになれば効果的な受粉が期待されると考えられた.そのため柱頭と葯の接近した時間にニホンミツバチの出巣をコントロールする巣門開閉装置を考案し,次年度の試験に備えることにした.
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