研究概要 |
砂丘農地からの硝酸性窒素の溶脱低減,生産性の維持・向上,さらに生産物の安全性も視野に入れた肥培管理法開発のために種々の検討を行った. 1)不攪乱砂丘土壌を充填したモノリスライシメータでラッキョウを栽培し硝酸性窒素溶脱特性を調べた.各種肥効調節型肥料を用いた結果,硝酸性窒素総溶出量は若干軽減できたが,根域の発達が不十分な生育初期の溶脱を効果的に抑制できなかった.土壌の養分保持特性を改善する資材(合成ハイドロタルサイト様鉱物,植物炭化物)の効果を検討したが,ライシメータ試験では明瞭な効果を見いだせなかった。種々の検討の結果,作物の生育,特に根域の生長を考慮に入れた,局所的な施肥が硝酸性窒素溶脱を抑制する最も効果的な方法と結論した. 2)植物炭化物の効果をポット試験で検証した結果,砂丘未熟土の養分保持特性,保水性を大きく改善し,窒素成分の溶脱抑制と作物の大きな生育改善を認めた. 3)根群域からの下方浸透量と塩分濃度の経時変化を記録できる装置(SCFS)を開発した.これをラッキョウ栽培下の砂質圃場に設置し,サクションをかけて浸透水の量と質を測定した結果,地下水へ溶脱する硝酸性窒素の濃度変化などの経時変化を明らかにした.センサーを用いて土壌中の溶質移動傾向を捉え,SCFSによって下方浸透水の水量および水質の両方を把握することが可能なモニタリングシステムを構築できた. 4)植物体内,特に可食部の硝酸性窒素濃度を低く抑える窒素肥料を検索するために,砂丘未熟土を用いてコマツナ栽培した.その結果,生産性,低硝酸態窒素含有率,高クロロフィル含有率,高カルシウム含有率のためには被覆窒素肥料が適しており,硝酸性窒素含有率は,被覆燐硝安区,被覆尿素区で低く抑えられ,カルシウム含有率は,被覆硝酸石灰区で良好であった。すなわち,被覆燐硝安系肥料が最も適していた.
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