生体内でカドミウムはメタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)と結合している。これを特異的に分解すれば水産廃棄物中のカドミウムをイオン化し分離できる。酵素分解を用いれば環境にやさしい水産廃棄物の脱カドミウム処理が可能になる。 システイン・リッチなタンパク質であるメタロチオネインを特異的・積極的に分解する酵素は新規性が高く、今までにない性質が期待できる。我々の探索によって細菌Arthrobacter nicotnovorans 23-0-11株がカドミウム遊離能を持つ菌体外プロテアーゼを生成することを発見した。 目的のプロテアーゼを単離するためA.nicotinovorans 23-0-11株の培養上清を2種類のイオン交換カラムクロマトグラフィーにかけて酵素を精製した。精製酵素の分子量は27kDaで、市販のプロテアーゼと比較して、ホタテ貝ウロからカドミウムを効率的に遊離させる特徴を示した。 精製酵素の至適pHは7.0で至適温度は50℃であり、pH3.0-9.0、60℃以下で安定であった。阻害剤の影響と合成基質を用いた実験から本酵素はエラスターゼ様の中性セリンプロテアーゼであると推定した。 遺伝子のクローニングを行うために精製酵素をプロテアーゼで断片化して4ヶ所の内部アミノ酸配列を得た。N末端を含めた5ヶ所にプライマーを設計してPCRを行い、部分配列を増幅した。それをもとに全長の遺伝子とアミノ酸配列を決定した。アミノ酸配列にはセリンプロテアーゼで保存されているモチーフが含まれていた。アミノ酸配列の相同性を検索したところArthrobacter sp.FB24の未同定タンパク質と69%の相同性を示した。既知プロテアーゼとの相同性は30%未満であり、新規プロテアーゼと考えられる。 クローニングした酵素遺伝子を大腸菌に導入し、複合タンパク質として発現させた。複合タンパク質は封入体になって不溶化したため、今後は宿主とベクター、発現条件の検討をして大量発現を行う。
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