研究概要 |
近年の化学工業ではグリーンケミストリーの達成を目指して、化成品・医薬品などの合成に生体触媒を積極的に利用する研究が盛んとなっている。本研究では、機能性ポリマー・液晶・農薬合成の原料として有用な芳香族カルボン酸の合成法を開発するために、広範な微生物を対象としてカルボキシル化反応を探索し、物質変換バイオプロセスに応用することを目的としている。脱炭酸酵素の中には効率的にカルボキシル化を触媒する酵素群が存在することを最近明らかにしてきており、本研究では、この脱炭酸酵素群の反応・分子特性を解明するとともに、物質生産系への応用を検討した。 平成17年度においては、酵母およびカビなどの真核微生物にも同様の脱炭酸酵素が存在することを明らかにした。見出した2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を2株の微生物から精製し、反応特性を明らかにした。酵素の安定性に優れていること、サブユニット分子量やN末端アミノ酸配列の解析から、すでに見出してきた炭酸固定反応をも効率的に触媒する脱炭酸酵素群が2つのグループに大別できることが判明した。3,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素の遺伝子クローニングと一次構造解析も行い、新規な一次構造を持っ酵素であることも示した。物質変換系への適用性については、2,3一ジヒドロキシ安息香酸の位置選択的なカルボキシル化を検討し、副生成物を生じない効果的な芳香族ヒドロキシカルボン酸の合成が可能であることが明らかとなった。
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