研究概要 |
近年の化学工業ではグリーンケミストリーの達成を目指して、化成品・医薬品などの合成に生体触媒を積極的に利用する研究が盛んとなっている。本研究では、機能性ポリマー・液晶・農薬合成の原料として有用な芳香族カルボン酸の合成法を開発するために、広範な微生物を対象としてカルボキシル化反応を探索し、物質変換バイオプロセスに応用することを目的とした。脱炭酸酵素の中には効率的にカルボキシル化を触媒する酵素群が存在することを最近明らかにしてきており、本研究では、この脱炭酸酵素群の反応・分子特性を解明するとともに、物質生産系への応用を検討した。 芳香族ヒドロキシカルボン酸の合成に利用できる酵素として、2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素および2,3-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を見出した。それぞれの精製酵素を調製して反応特性を解析するとともに、酵素遺伝子のクローニングと一次構造の解明を進めた。また、炭酸固定能を物質変換系に適用した。反応特性と構造解析から、炭酸固定機能を持つ脱炭酸酵素は大きく2つのグループに分類され、データベースにはこれらの脱炭酸酵素と相同性を示す機能未知タンパク質群が幅広く分布していることが明らかとなった。も行い、新規な一次構造を持つ酵素であることも示した。物質変換系への適用性については、2,3-ジヒドロキシ安息香酸の位置選択的なカルボキシル化を検討し、副生成物を生じない効果的な芳香族ヒドロキシカルボン酸の合成が可能であることが明らかとなった。2,6-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は安定性に優れており、CO_2とレゾルシノールを原料として220g/Lの2,6-ジヒドロキシ安息香酸を、副生成物を生じずに合成できることを示した。
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