研究概要 |
羽毛は家禽工程の副産物として世界で年間約100万トン以上発生する未利用資源であり、廃羽毛中には有用なアミノ酸が多く含まれている。これらの羽毛を酵素処理により有効利用する為に耐熱性アルカリケラチナーゼ酵素生産菌を自然界より分離し、本酵素生産菌の同定、生産酵素の精製と酵素学的特性、羽毛分解特性を明らかにした。 本酵素生産菌は、グラム陽性で運動性を有する桿菌であり、胞子を形成し、さらに生理学的性質及び16SrDNA解析の結果、アルカリ条件下で生育する好アルカリ性Bacillus属に属ずる菌株と判明した。酵素の大量生産を行なう為に培地条件並びに通気条件を検討後、5Lジャーファーメンターにより大量生産培養を行った。得られた培養液を除菌後、80%硫安沈殿を行い、DEAE陰イオンクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを行い、目的の羽毛分解酵素を精製した。SDS-PAGEにより、精製酵素の単一性と同時に羽毛粉末含有ゲル上で羽毛分解性(活性染色)を確認した。分子量は約27kDaであった。また、生産酵素は、アゾケラチン(修飾羽毛)に対してpH7〜12、30℃〜60℃で活性を有し、特にpH8〜10、50℃〜60℃にかけて高い活性を示した。また、ケラチナーゼ活性はpH10条件下、60℃で10分間加温後も活性を保持していた。さらに各種の金属イオン(Ca^<2->,Mg^<2+>,Zn^<2+>等)、各種阻害剤(EDTA,TritonX-100,SDS等)添加において基本的に影響は受けなかったが、PMSFにより完全に阻害され、本酵素はセリンプロテアーゼと推測された。本酵素は羽毛は分解するが、人の髪や犬の毛、羊毛は分解しなかった。 本酵素は、種々の酵素学的性質から耐熱性の新規なアルカリ酵素の可能性が高いケラチナーゼ酵素であると考えられた。
|