通常のプロテアーゼでは分解されにくい難分解性物質の羽毛を分解し、かつアルカリ側で活性を有するFA30-01株の生産する新規なアルカリ酵素の生産前の固定、酵素の精製及び酵素化学的性質、酵素遺伝子のクローニング及び解析を目的に行った。本FA30-01株は、16SrDNA系統解析、生理生化学的、形態学的解析を行なった結果、Bacillus pseudofirmuに帰属する前株と固定された。FA30-01株生産羽毛分解酵素は、硫安沈殿、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより精製され、本酵素の分子量は、27.5kDa、等電点はpI5.9であった。また本酵素は、アソケラチンに対してpH6〜pH11.5、30〜80℃の広い範囲でケラチナーゼ活性を示し、特にpH8.9〜103、60℃で至適活性を有した。さらに本酵素は、Ca^<2+>無添加条件で80℃、1時間加温後も残存活性を15%も維持し、耐熱性を有する酵素であった。 本酵素のN末端アミノ酵配列分析の結果(Gln-Thr-Val-Pro-X-Gly-Ile-Pro-Tyr-Ile-Tyr-Ser-Asp(Xは不明))から、既知ケラチナーゼとは相関性が低く、アルカリプロテアーゼのALPIと商い相同性を有していたが、ALPIとは分子量、等電点、耐熱性が異なっていた。FA30-01株生産ケラチナーゼの内部アミノ酸配列から、PCR法を用いたクローニング法を試みた結果、ケラチナーゼ酵素遺伝子(約1270bp)を取得した。本遺伝子は1125bpのORFよりなり、成熟型ケラチナーゼ遺伝子は272アミノ酸をコードしていた。開始コドン4bp上流にはRBSサイトが、また32bpと56bp上流には-10、-35プロモーター領域が存在し、終始コドン13bp下流にはターミネーターが存在していた。本遺伝子の272アミノ酸残基より、成熟酵素の推定計算分子量は、28、222、39Daであった。本酵素遺伝子の推定アミノ酸配列において、129〜139位にセリンプロテアーゼのアスパラギン酸活性部位、163〜173位にヒスチジン活性部位、318〜328位にセリンの活性部位が確認でき、本ケラチナーゼは、ズブチリシンファミリーに属することがわかった。相同性検索の結果、アルカリプロテアーゼALPIと本酵素は96%の相同性を有するが、異なる新規酵素であることがわかった。
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