研究概要 |
1 糖脂質合成酵素の各種基質およびそのアナログの調製 アーキオールは高度好塩菌の全脂質から調製した。モノグルコシルアーキオール(MGA)、不飽和アーキオールなどは化学合成した。カルドアーキオールはメタン生成菌の全脂質から調製した。 2 上のように調製した脂質基質とUDP-グルコースをMethanothermobacter thermautotrophicusの無細胞抽出液と反応させると、MGAとジグルコシルアーキオール(DGA)が生成した。これらの生成物の構造をTLCおよびマススペクトルで確認した。MGA合成酵素は可溶性画分に存在し、Mgイオンを必要とせず、イノシトールリン脂質で促進された。DGA合成酵素は膜結合性で、Mgイオンを必要とし、その活性にはイノシトールリン脂質が必須であった。従ってこの両酵素は別の酵素であると推定された。 3 基質特異性 1で合成した各種基質アナログを使ってMGA合成酵素の基質特異性を調べたところ、飽和sn-2,3型アーキオールと飽和sn-2,3型カルドアーキオールに最も高い活性を示し、不飽和型、骨格が対掌体であるsn-1,2型に対する活性は低かった。 4 リン脂質合成酵素の系統樹 真正細菌のセリンリン脂質、グリセロールリン脂質、イノシトールリン脂質の各合成酵素はCDP-アルコールホスファチジルトランスフェラーゼファミリーという酵素ファミリーに属するホモログである。古細菌のこれらリン脂質合成酵素もデータベース検索の結果、同じ酵素ファミリーに属するものであることが判明した。古細菌の種類別のリン脂質の分布状況と照合してイノシトールリン脂質合成酵素とグリセロールリン脂質合成酵素を同定することができた。セリンリン脂質からエタノールアミンリン脂質を合成するアーキチジルセリンデカルボキシラーゼと思われる酵素の遺伝子を多くの古細菌ゲノムから検出した。
|