研究課題
基盤研究(C)
リン脂質と糖脂質は細胞膜の主要で不可欠の構成成分であり、生命の発生初期において、極性脂質の発生があって初めて細胞の出現があったことを考えれば、従来知られている生物とは基本的な生化学的性質を異にする古細菌の細胞の起源を考察する上で、極性脂質の構造とその生合成機構は重要な手がかりを与えると予想される。事実、これまでの構造および生合成研究の結果から、古細菌と他の生物は膜脂質のグリセロール骨格の立体構造で区別され、その分離にともなって古細菌と真正細菌が分化したとの仮説が提唱された。本研究では極性基部分の進化に焦点を当てた。メタン菌のセリンリン脂質合成酵素のホモログがBLASTサーチによって多数検出され、リン脂質の分布の情報を重ね合わせることによって、イノシトールリン脂質生合成酵素とグリセロールリン脂質生合成酵素、セリンリン脂質合成酵素のクラスターを持つ大きな系統樹を作成した。これら酵素はセリンリン脂質合成酵素以外はまだ酵素として研究されていないが、セリン、イノシトール、グリセロールを極性頭部とする古細菌のエーテル型リン脂質の生合成に関与する酵素は、真正細菌の同族酵素も含めていずれもCDP-alcohol cytidyltransferase familyに属するホモロガスな酵素であることが明らかになった。古細菌の糖脂質合成酵素の遺伝子は同定することができていないが、糖脂質(monoglucosyl-archaeolとdiglucosylarchaeol)合成に関与する酵素を発見し、その性質を調べた。酵素の反応様式、基質特異性などの解析から古細菌と真正細菌で概略同一の反応様式で進行し、基質の立体特異性は古細菌、真正細菌の脂質の特徴を反映するものであることが明らかになった。これらのことから、古細菌と真正細菌の分化以前の共通祖先の膜脂質についてWachtershauserのPre-cellsでリン脂質の極性頭部も糖脂質の糖鎖も現在のものと同一のものが存在し、それらが古細菌、真正細菌に共通に持ち込まれたことを新たに考察した。
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