酵母が他の酵母を殺すキラー作用は、発酵制御や医療、農薬に応用できる可能性が高い。本研究課題では、キラータンパク質が出芽酵母の細胞表層に結合後、細胞内ヘキラー情報が伝わる機構を明らかにすることを目指す。本研究で用いるキラータンパク質(Kluyveromyces lactis酵母Killer protein=KlKP)は、標的酵母の細胞壁糖鎖であるキチンを標的に結合し、毒素のサブユニット(γ)が侵入する。本研究では、KlKPが出芽酵母の細胞内に情報を伝える手がかりを明らかにする。平成16年度は、未知キラー耐性変異遺伝子の同定を行う。 1980年代に得られたKlKP耐性変異株のうち、複数の未同定遺伝子変異株(Aセット)がある。また、提案者は既に、酵母全ゲノムの5/6を占める非必須遺伝子破壊株から、新規の同定済みKlKP耐性遺伝子を分離している(Bセット)。そこで、Aセットと、Bセットを接合させて、接合株がKlKP耐性になったものからAセット株の変異遺伝子のうち1つを特定した。特定した遺伝子は、細胞膜の糖脂質の合成酵素であったことから、中間体の合成プロセスに関わる酵素の多重変異株を作成して、中間体の生産が阻害された株でのキラー感受性を解析した。その結果、中間体合成に関わる遺伝子変異株もKlKP耐性を示した。さらに、変異株では野生株とは異なり、KlKPの毒素サブユニット(γ)が、細胞内に侵入しなかった。従って、感受性株におけるKlKPタンパク質の細胞内侵入に細胞膜上の糖脂質が必要であることが明らかになった。
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