研究概要 |
これまでに、α1,4GlcNAc残基を有するムチンが、胃粘膜におけるピロリ菌の感染防御に関与することが報告されている。そこで本糖鎖抗原の生合成に関与すると考えられる、ウマ血清α1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(α4GnT)の諸性質を明らかにすることを目的とし、(1)本酵素の精製法の確立、(2)本酵素活性の高感度検出用の蛍光基質の合成を行った.(1)ウマ血清80%硫安沈殿画分をCM-Sepharose, Con A-agarose, UDP-hexanolamine-agaroseの各クロマトグラフィーに順次供した。(2)α4GnT活性測定用基質としてGalβ1,3GalNAcα-pAPと6-(fuorescein-5-carboxiamido)hexanoic acid, succinimidyl ester(FCHASE)との結合反応によりGalβ1,3GalNAcα-AP-FCHAを合成した。(1)α4GnTはウマ血清から約5,700倍に精製された。(2)Galβ1,3GalNAcα-pAP-FCHAは本酵素活性の高感度基質として有用であった。 次に、ピロリ菌の感染・生育防御剤の開発を目的としα-ポリグルタミン酸(α-PGA)をベースとした、α1,4 GlcNAc残基を高密度に含有する人工糖タンパク質の合成を行い、本糖鎖構造を認識する抗体との相互作用を解析した。3種類のα1,4 GlcNAc含有p-アミノフェニル(pAP)配糖体をそれぞれ(α-PGA)の側鎖に導入することにより、糖鎖構造および、糖鎖置換度の異なる人工糖タンパク質を合成した。また、本α1,4 GlcNAc含有人工糖タンパク質を用い、HIK 1083抗体の糖鎖認識機構について解析した。α-PGAとpAP配糖体の結合反応において、両者のモル比を制御することにより、糖鎖置換度が20-60%のα1,4 GlcNAc含有人工糖タンパク質を合成することができた。ELISA法によるこれら人工糖タンパク質と抗ムチンモノクローナル抗体HIK 1083との相互作用解析において、本抗体の糖鎖認識能はα1,4 GlcNAc残基だけでなく、アグリコン側の構造にも影響される可能性が示唆された。また、糖鎖置換度の増加に伴い、本抗体との反応性も増大する傾向が観察された。
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