研究概要 |
胃腺粘液細胞は、GlcNAcα1,4Galβ-Rを糖鎖に持つムチンを分泌し、本ムチンがピロリ菌(Helicobacter pylori)感染に対する防御機能を持つことが知られている。本研究では、GlcNAcα1,4Galβ-Rを糖鎖を高密度に有する人工ムチン合成プロセスを開発し、人工ムチンによる腸内病原性細菌の感染・生育阻害剤の開発を目的としている。 1.新規ガン糖鎖抗原の酵素合成を行うことを目的とし、α1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(α4GnT)のスクリーニングを行った。その結果、ウマ血清中に比較的高い本酵素活性を見出した。そこで、ウマ血清の硫安沈殿画分をα4GnTの粗酵素源として、供与体基質UDP-GlcNAcを用いてa1,4GlcNAc含有糖鎖抗原となるオリゴ糖鎖の合成を試み、六種類のa1,4GlcNAc含有オリゴ糖鎖の酵素合成に成功した。これら合成オリゴ糖鎖をポリグルタミン酸をペプチドベースとして側鎖に配した人工ムチンを作製した。 2.ウマ血清由来の硫安沈殿画分を順次、CM-Sepharose、Concanavalin A-agarose、Superdex 200p.g、UDP-hexanolamine agaroseの各種クロマトグラフィーに供し、最終的に比活性5,300倍まで本酵素活性を純化し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動的に均一な評品を得た、酵素額的諸性質を明らかにした。また、ウマα1,4GnTのクローニングを試みたところ、本酵素をコードする1026bpのcDNAの全配列をうることに成功した。予想されるアミノ酸配列は、ヒト由来の酵素に対して85%の相同性を示した。
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