研究概要 |
大腸菌あるいは酵母内で発現させたヒト由来酵素を用いて、現在、治療薬として使用されているビタミンD誘導体および今後、骨粗鬆症や癌の治療薬として開発が期待されるビタミンD誘導体の代謝を調べ、ヒト体内における代謝を予測した。また、1α位水酸化酵素CYP27B1変異体を作成し、その性質を調べることにより、本酵素の構造と機能の関係を明らかにした。以下に主な内容を記す。 (1)種々のビタミンD誘導体、すなわちA環ジアステレオマー、2位メチル化体、ヘキサフルオロ体、20-epi体、2α-(3-ヒドロキシプロポキシ)体の代謝を比較したところ、CYP24A1による代謝様式ならびに代謝速度は誘導体の構造により大きく異なりヒトとラットでは代謝様式に違いがあることがわかった。また、各種誘導体においてCYP24A1による代謝におけるk_<cal>/K_mと血中カルシウム濃度上昇作用の間に明らかな相関が見られた。 (2)19-ノルビタミンD誘導体は前立腺癌等の治療薬として期待されている。シトクロムP450による25(OH)-19-ノルビタミンD_3および1α,25(OH)_2-19-ノルビタミンD_3の代謝解析を行い、体内での代謝予測を試みた。CYP27B1の25(OH)_2-19-ノルビタミンD_3に対する1α位水酸化活性は,25(OH)ビタミンD_3に対する活性に比べはるかに低く、他に二つの代謝物が検出された。また、1α,25(OH)_2-19-ノルビタミンD_3を基質としてヒトおよびラットCYP24A1による代謝を比較したところ、1α,25(OH)_2ビタミンD_3の場合と同様に、ヒトCYP24A1においてC-23代謝経路とC-24代謝経路の両者がみられ、C-23代謝経路の割合は1α,25(OH)_2ビタミンD3よりも高かったが、ラットCYP24A1においてはほとんどC-24代謝経路のみであった (3)GroEL/ESとの共発現系を用いることにより、マウスCYP27B1およびその変異体の大腸菌内大量発現に成功した。さらに、コンピューターモデリングにより構築したCYP27B1の立体構造からSer408が基質結合に、Arg458がアドレノドキシンとの相互作用に重要な役割を果たしていることを予測した。部位特異的変異導入により、それぞれ複数の変異体を作成し機能を解析したところ、予測が正しいことがわかった.
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