本研究の目的は、脳内トリプトファン代謝レベルをコントロールする酵素群の動態を分子レベルでモニタリング(定量)する方法を開発することによって、危険な細胞毒(キノリン酸)から脳を守る環境条件・栄養条件を見いだすことにある。そのアプローチとして、トリプトファンからNADが変換される代謝経路(de novo合成系)の鍵酵素であるキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRTase)遺伝子を人為的に欠損させたマウス(QPRTaseノックアウトマウス)の作出を行ってきた。今年度の実施状況は以下の通りである。 まずcDNAをプローブに、マウスQPRTaseゲノムを取得し、マウスQPRTaseゲノム構造の解析を行った結果、マウス7番染色体F4領域に4つのエキソンから構成されることが判明した。その情報に基づいて、エキソン2から3を欠損するように遺伝子破壊用ベクターを構築し、ES細胞に導入して、ターゲティングを受けたQPRTase遺伝子座を持つ細胞株を選択した。この細胞株をピエゾマニピユレーターを用いてC57BL/6N系統マウスの子宮に移植し、キメラマウスを得た。 また、QPRTaseノックアウトマウスの遺伝子型を正確に確定するために、ICRマウス及び既に作出済みのGP2ノックアウトマウスを用い、ジェノタイピングの条件検討を行った。QPRT遺伝子検出用プライマー7種類を設計しジェノタイピングPCRを行った結果、プライマーセット7ペアー中4ペアーが使用可能だということが判明した。また、ネオマイシン耐性遺伝子検出用プライマーを6種類設計し、ジェノタイピングPCRを行った結果、プライマーセット6ペアー全て使用可能だと判明した。これら使用可能なQPRTプライマーならびにneoプライマーを組み合わせることでQPRTノックアウトマウスの遺伝子型解析ができると判断した。
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