研究概要 |
植物タンパク質の網羅的解析法と内在性自己防御タンパク質の検出法の確立を目的として,1)種々の植物抽出液における2次元電気泳動条件の検討,2)2次元電気泳動上におけるキチナーゼタンパク質スポットの検出法の確立,および3)タンパク質スポットに含まれるタンパク質の微量構造解析法の検討を行った.すなわち,種々の環境変化(病原菌の感染やストレス負荷)に対して誘導される自己防御タンパク質を微量で検出・同定するため,植物タンパク質のプロテオーム解析手法の確立を行った.キチナーゼはSDS電気泳動後,SDSを除去して基質ゲルとインキュベートすることにより活性染色を行うことができる.この活性は基質ゲルで泳動を行うとキチナーゼが有するキチン結合ドメインの有無によって挙動が異なることを見いだした.この性質を利用して電気泳動と活性染色によるキチナーゼのクラス分類を可能にした.また,2次元電気泳動において,変性剤を含まない系を用いて電気泳動をおこない,活性染色することにより,2次元電気泳動においても活性染色が可能であることを明らかにした.したがって,これらの手法を組み合わせることにより,キチナーゼのザイモグラフィーによりクラス分類および酸性・塩基性キチナーゼの検出が可能となった.次に,2次元電気泳動によるタンパク質スポットの微量構造解析法の確立のため,質量分析機を用いたデノボシークエンス法の最適化条件の検討を行った.植物キチナーゼはゲノムが明らかでない植物種由来のものを解析する必要があるので,一般的に用いられるマスフィンガープリント法が用いることができない.したがって,ペプチド鎖内部のアミノ酸配列情報を取得する必要がある.そこで,断片化ペプチドのMs/Ms解析によるデノボシークエンス法の検討を行った.すなわち,インゲル消化におけるトリプシン濃度,アルキル化条件,抽出条件等を詳細に検討した結果,最適条件を確立することができた.
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