研究概要 |
植物タンパク質の網羅的解析法と内在性自己防御タンパク質の検出を目的として,1)病原菌感染やストレス等における誘導型自己防御タンパク質のプロテオーム解析および機能解析を試みた.手法としては,16年度に確立した植物抽出液の2次元電気泳動法,インゲル消化法,・および質量分析条件をもとに,種々の環境変化(病原菌の感染やストレス負荷)に対して誘導される自己防御タンパク質の微量検出・同定を行った.さらに,変性剤を含まない系を用いて電気泳動をおこない,活性染色で活性を検出したバンドのタンパク質同定をプロテオーム解析の手法を用いて試みた.なお,2次元電気泳動前処理法として特許を申請し,現在和光純薬工業から製品化を検討中である. まず,金属ストレスを与えたイネ科植物根で,金属ストレス耐性を有する植物中に,2次元電気泳動により新たにキチナーゼと相同性を有するタンパク質スポットを検出した.しかし,本キチナーゼは分子量が45kDaと普通のクラスIキチナーゼと比較して分子量が大きく,特殊な構造を有するキチナーゼであることが推察された.すなわち,最も分子量が大きいクラスIキチナーゼに複数のキチン結合ドメインが存在するキチナーゼである可能性が考えられた.そこで,金属ストレス植物根からタンパク質を抽出し,アフィニティクロマトグラフィーによりキチン結合能が強いキチナーゼの精製を試みている. 一方,登熟期や感染時に特異的に誘導されるキチナーゼを検出する目的で,ヤマノイモのむかごについて各登熟段階の試料についてSDS電気泳動と活性染色でキチナーゼの検出を試みた。その結果,登熟時に特異的に発現するキチナーゼは見いだされなかったが,傷害を受けた試料に非常に高いキチナーゼ活性が検出された.したがって,むかご中に傷害誘導型キチナーゼが誘導されていることがわかった.現在活性染色バンドについてインゲル消化後,質量分析でタンパク質構造解析を試みている.
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