研究概要 |
Trichoderma reeseiが産生するセルラーゼ中にラクトース(Lac)やN-アセチルラクトサミン(LacNAc)二糖を人工基質(二糖のpNP体)から遊離するだけでなく、適当なアグリコン(R-OH)に転移・縮合する酵素を見いだした。部位特異的変異などによる二糖とアグリコンとの縮合率向上を目的に当該酵素の精製と同定を行った。粗酵素を硫安塩析、陰イオン交換クロマト、等電点クロマト、ゲル濾過で電気永動的に均一になるまで精製した。精製酵素はSDS-PAGE的に単一で、分子量は54,000、等電点は4.8-5.1で、CMC/Avicel比が著しく高いことからendo-β-1,4-glucanaseの一種、EGIであることが示唆された。長岡技科大より異宿主で発現した組換え酵素(A.oryzaeで発現したrEGI、S.pombeで発現したrEGII)を入手しrEGIにLac縮合活性を確認した。以上より、Lac縮合酵素の本体の一つはEGIであると結論した。精製rEGIにLacおよびLacNAc二糖の遊離および転移活性とLac縮合活性が認められたが精製rEGIIには認められなかった。EGIと同じGlycoside Hydrolase Family7に属すその他の酵素(弘前大学より提供)にも二糖遊離活性、Lac縮合活性を確認した。T.reesei QM9414株の培養菌糸体よりmRNAを抽出しRT-PCR法によりEGI cDNAの増幅を試みたところ1,400 bp付近にバンドが出現した。シークエンシングの結果、既知のEGI cDNA遺伝子配列と99%一致した。当該cDNAをプラスミド(pUC19)に組み込んで大腸菌(DH5α)の形質転換を行なった。EGIの大腸菌での発現と当該酵素の部位特異的変異によるタンパク工学的改変は、縮合酵素のスクリーニング法がなく困難が予想され平成18年度以降の継続課題とした。
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