レニンは血圧調節に重要な役割を担っているアスパルテックプロテアーゼである。本酵素の内在性阻害タンパク質、レニン結合タンパク質(RnBP)は、ブタ腎臓から最初に単離されている。最近、RnBPがGlcNAc 2-エピメラーゼ活性を持つことが示されている。GlcNAc 2-エピメラーゼの活性発現には、ヌクレオチドの添加が必須である。これまで、各種動物由来のGlcNAc 2-エピメラーゼの比較から、ラット型酵素が最もヌクレオチドに高い親和性を持つことが判明しており、また、分子の中央領域がヌクレオチド結合に関与することが明らかとなっていた。そこで、分子の中央領域におけるヒト型酵素とラット型酵素の比較により異なるアミノ酸残基に注目し、それら残基の相互置換体を作成し、大腸菌で発現後、ATPに対する親和性を比較検討した。その結果、ヒト型酵素変異体では、171残基のグルタミンをセリンに置換した変異型酵素でATPに対して野生型酵素より高い親和性を示した。一方、これとは反対に、ラット型酵素変異体では、171残基目のセリンをグルタミンに置換した変異型酵素がATPに対して野生型酵素に比べ有意に親和性が低下していた。これらの結果から、171残基目のアミノ酸がヌクレオチド結合に重要な残基であることが示された。また、これまで入手が困難であった組換え型ヒトレニンに関しては、チオレドキシン・ヒトプロレニン融合体の大腸菌での大量発現に成功した。発現タンパク質は封入体を形成した。そこで、様々な条件下でその巻き戻しを検討した結果、高濃度のアミノ酸と界面活性剤を用いることで巻き戻しが可能であることを見出した。また、巻き戻し終了後、トリプシンによる活性化処理で、レニン活性が発現することが確認された。
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