研究概要 |
本研究では遺伝子改変が容易な酵母の遺伝子発現系を利用し、単一アリルからなるチューブリン蛋白質の発現・精製を行うことにより、これまで解析が難しかった単一のアリルチューブリンの重合・不安定性に関する生化学的解析を行うとともに、変異チューブリンを発現・精製することにより、微小管結合タンパク質や微小管作用薬との相互作用や結合部位の解析を行うことを目的とする。 昨年度に引き続き、α-チューブリン、β-チューブリンそれぞれのC末端を改変した変異チューブリンのみを発現する酵母の作成を試みた。C末端酸性アミノ酸クラスター領域の酸性度や長さを変えた変異チューブリン、及びさらに内側のヘリックス12領域に変異を導入したチューブリン遺伝子を作成した。これらの変異チューブリン遺伝子をチューブリンシャッフル株に導入後、野生型チューブリンをコードしているプラスミドを除去することにより、変異チューブリンのみを発現している酵母を作製した。C末端酸性アミノ酸クラスターに変異を導入したチューブリン発現酵母は、いずれも野生型チューブリンを発現している株と比較して問題なく生育が見られたことから、導入した変異は微小管機能を維持していると考えられた。それに対しさらに内側にあるヘリックス12領域に変異を導入した変異チューブリンのみを発現する酵母を得ることは出来なかった。一昨年にヒトチューブリンが酵母チューブリンを相補できないことを報告したが、この原因の少なくとも一部は、配列が大きく違うC末端の酸性アミノ酸クラスター領域の配列に依存しているのではなく、より内側のヘリックス12の構造の違いによることが予想された。この予想に基づき、現在ヘリックス11,12よりN末側をヒトチューブリンに変えた変異チューブリン発現酵母の作成を試みている。
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