本研究では遺伝子改変が容易な酵母の遺伝子発現系を利用し、単一アリルからなるチューブリン蛋白質の発現・精製を行うことにより、これまで解析が難しかった単一のアリルチューブリンの重合・不安定性に関する生化学的解析を行うとともに、変異チューブリンを発現・精製することにより、微小管結合タンパク質や微小管作用薬との相互作用や結合部位の解析を行うことを目的とする。 出芽酵母の全てのチューブリン遺伝子を破壊し、代わりにTUB1、TUB2をURA3マーカー・プラスミドpRS316上に持ったシャッフルストレインを作製した。次に変異チューブリン遺伝子の導入を行った。その際、微小管精製を容易にするためにA19K、T23V、G26D、N227H、Y270Fの5重変異を導入した。この変異により本来タキソールと結合しない酵母チューブリンがタキソールと結合し、In vitroで重合安定化して微小管を得ることが可能になった。そこで次に微小管精製法の検討を行った。酵母抽出液からDEAE-Sepharose、MonoQカラムを通すことにより、チューブリン蛋白質の粗精製を行った。ついで限外ろ過濃縮後、微小管重合・脱重合により重合活性のあるチューブリンを40gの酵母菌体から30μg精製することが出来た。精製したチューブリンはタキソールにより重合安定化し、電子顕微鏡観察により13本のプロトフィラメントからなる正常な微小管形態をしていることを確認した。そこで次にα-チューブリン、及びβ-チューブリンの微小管結合蛋白質結合領域に存在する酸性クラスターの数を変化させた変異チューブリン遺伝子を作成、シャッフルストレインに導入し、変異チューブリン発現酵母を作成した。作成した変異チューブリン発現酵母はいずれも野生型チューブリン発現酵母とほぼ同等の増殖速度を示したことから、細胞内で正常な微小管機能を保持していることが確認できた。さらにこれらの酵母からチューブリンの精製したところ、予想した分子量、等電点を持った変異チューブリンが得られた。
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