本研究では、植物保護への応用が期待できるテルペン系天然有機化合物、すなわち、アレロパシー活性物質あるいは昆虫成長制御作用物質の合成研究に取り組んでいる。本年度においては、主として、以下の成果をあげた。 Brevione類の合成研究:アレロパシー活性物質brevione Bの光学活性体合成に取り組んだ。既に報告しているラセミ体合成の合成中間体に対して酵素を用いた速度論的分割を行うことにより、光学分割を達成した。得られた光学活性中間体はbrevione Bの両鏡像体へと導いた。その結果、天然物の絶対立体配置造が確定した。(投稿準備中) Annuionone類の合成研究:アレロパシー活性物質annuionone Aの光学活性体合成に取り組んだ。既に報告しているラセミ体合成における合成中間体ケトンを還元して得られるアルコールを、MTPAエステル化することによってジアステレオマー分離による光学分割を達成した。得られた光学活性中間体はannuionone Aの両鏡像体へと導いた。その結果、天然物の絶対立体配置が確定した。(投稿準備中) 15-Deoxyoxalicine Bの合成研究:昆虫成長制御作用物質15-deoxyoxalicine Bのモデル合成に取り組んだ。ニコチン酸から誘導したピリジン環を含むα-ピロンと、Wieland-Miescherケトンから得られる二還性ビニルエポキシド(モデル基質)との鍵反応(連続求核置換によるスピロ環形成反応)が低収率ながら進行することを確認した。今後更なる検討を継続する。
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